代参(だいさん)とは

■そもそも代参(だいさん)とは

 

代参とは、「代理参拝」の略で、祈願者本人に代わり、神仏へ代わりのものが参拝することです。代参する人のことを「代人」と呼び、ご主人に代わって参拝する犬は「代参犬」と呼ばれたそうです。江戸時代から続く風習で、一般的に行われていたものでした。

 

伊勢講や熊野講などで、代表者が遠隔地の社寺霊場に参詣し、護符を受ける代参講などが有名です。また、清水次郎長の代わりに金毘羅大権現に参拝した森石松も有名ですね。

 

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■こんぴら狗とおかげ犬

 

「こんぴら狗」や「おかげ犬」という言葉を聞いたことはありませんか?江戸時代、参拝の旅は大変遠く難しいものでした。今でこそ交通機関が発達していますが、昔はありません。

 

また、気軽に移動することが許されていない時代でもありました。そこで当人に変わって代理で参拝に行くという風習ができたのです。この代参は、人だけでなく、犬が代わりに行くこともありました。当主が飼い犬に参拝を託し、旅に向かわせます。それが、「こんぴら狗」や「おかげ犬」のことです。

 

こんぴら狗は、「こんぴら参り」と書かれた袋を首にかけ、代参しました。おかげ犬は、伊勢神宮へおかげ参りをする旅に出かけます。こんぴら狗と同様に、首に袋をかけられました。

 

この袋の中には、旅に必要な資金やメモが入れられています。道中でこんぴら狗やおかげ犬に会った人は、エサをあげたり、寝床を用意したりと世話をしてくれます。その代わりに袋の中のお金をもらったり、逆にお金をあげて自分も参拝を頼んだり、とさまざまな人から親しまれていたようです。

 

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■おかげ犬「シロ」の代参

 

おかげ犬の中でも有名なのは秋田犬の「シロ」でしょう。シロは、福島県須賀川宿で床屋を務める市原家が飼っていた犬です。当主は毎年参拝していましたが、病気にかかり行くことがきなくなってしまったのです。そこで登場するのが、利口だった飼い犬シロです。

 

おかげ犬として、首に袋をかけ代参に行かせました。シロは伊勢神宮で参拝をし、無事に家に帰ってきたと言われています。その後、シロは忠犬として町中から称えられ、可愛がられたとも伝えられています。

 

このように利口で、忠誠心のある犬だからこそ人々はこんぴら狗やおかげ犬に参拝を託すことができたのでしょう。シロのように神の化身とされる白い毛だったことから、追い剥ぎなどにも襲われなかったと伝えられています。

 

そして、何より道中で出会う人々の助けが成功の鍵なのでしょう。周りの人に温かく見守られ、助けられたからこそ参拝できたと言えます。それほど代参犬は、皆に親しまれ、称えられていたのです。

 

犬が福島県を出て三重県まで行き、数か月後に帰ってくるなんて今では信じられません。

 

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■現在の代参

 

現在も代参の風習は残っており、特に近畿地方の一部で行われています。また、四国お遍路の代理参拝は有名ですね。代参という言葉をあまり聞きなれない方もいると思いますが、実は現代でもさまざまな参拝を代行しています。

 

例えば、縁結び、合格祈願、必勝祈願、厄除け、パワースポット参りを代行することもあります。レパートリーも多く、それによって価格も変化します。

 

伊勢神宮周辺で代参犬の銅像が飾られています。今も代参犬の面影を確認することができますよ。

 

そして何より現代に残したいのは、こんぴら狗やおかげ犬が道中で出会う人々の優しさでしょう。現代で、犬が歩いていたらあなたはどうしますか?

 

江戸時代のように犬を称え、助けることはあまりないかもしれません。代参は、江戸時代から続く良き日本の風習なのです。現代でもこの風習をなくすことなく、親しみやすいものとして提供できたらと私は願っております。

 

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<浮世絵=中央下に代参犬がいます。>

 

 

 

 

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